⑥運動3大理論

私が大切にしている運動理論が3つあります。まとめて勝手に「3大理論」と呼んでいます。それらは以下になります。

1.脱力反射理論

2.体幹理論

3.コーディネーション理論

 以前にもお伝えしましたが、運動能力が高くない子どもたち向けに、通常行われている運動指導「筋力理論(勝手に呼んでいます)」から逆転の発想で考えたものが「脱力理論」でした。「筋力を発揮する力でビリなら、逆に筋力を出さない脱力なら1位になれる」はずということからです。

 

 決勝戦のような緊張する場面では、体が固まってしまうと良いパフォーマンスができません。これは「主働筋・拮抗筋」の関係で働く筋肉の性質から来ています。筋肉は単体で働くことはありません。常に関節をはさんで反対側に位置する筋肉同士で関係し合って働きます。主働筋は縮む筋肉、拮抗筋は緩んで伸びる筋肉になります。

 例えば腕の筋肉で考えると、力こぶの筋肉(上腕二頭筋)と二の腕の筋肉(上腕三頭筋)の関係で、腕を曲げる時には上腕二頭筋が縮んで上腕三頭筋が伸びます。肘を伸ばすときには上腕三頭筋が縮んで上腕二頭筋が伸びるといった関係です。しかし緊張して関節の両側の上腕二頭筋と上腕三頭筋の両方で力が入ってしまうと、肘関節をうまく動かせなくなり、ガチガチになってしまうのです。

 このため「力を抜くこと=脱力」を一番に考えました。そのために「位置エネルギーmgh」を利用することや、人間の最速の動作である「反射」を取り入れるようになりました。そして「脱力反射理論」へと進化させて指導するよう心がけています。

 

 次に、その理論を補完するために「体幹理論」も利用しています。現在は体幹トレーニングが流行っていますが、それとは少し異なり、体幹を鍛えるのではなく、体幹の神経をうまく使うことを考える理論です。人間の動きは関節を中心とした「円運動」から成り立っています。そのため「てこの原理」を利用して体を動かすことを考える理論です。力を最小限にして速さや力を向上させるようにしています。

 

 3つ目として「コーディネーション理論」も大事にしています。最近コーディネーション・トレーニングが言われるようになりましたが、もともとドイツのトップアスリートを育成するために考案されたトレーニングであり、20年くらい前に日本に入ってきました。その頃の私はそんなことを全く知らない若造でしたが、速読の「インターチェンジ効果」から感覚神経を育てることによってパフォーマンスの向上が図れるはずと考え、自分なりに様々な角度から感覚神経について考えて取り組んできたものが、コーディネーション・トレーニングそのものでした。そのため、それも体系化してコーディネーション理論として取り入れて指導しています。

 

 

 このようなことを考えて指導に取り組んでいます。指導の一部だけ聞くと「デタラメ」と思われがちですが、二つ三つ、三つ四つと聞いていくうちに「おもしろい!」と思ってもらえるようで、練習時間に保護者や指導者が来て聞いていただけることが多かったです。このような理論ですが、広めていきたいと思っています。