①「低く構える」は正解?

 あらゆるスポーツにおいて「膝を曲げて、低く構える」スタンスは鉄則だと思います。バスケットボールでもディフェンスの基本であるサイドステップは低く構えることから始まりますが、私はこの「膝を曲げて、低く構える」ことに疑問を感じています。

 確かに、高くジャンプしたい場合は膝を深く曲げてジャンプするため、膝を曲げることで下半身の筋力を発揮しやすくすることはわかります。筋骨隆々の選手ならそれでいいと思います。しかし筋力が劣る選手の場合、低く構え続けることは筋肉を使い続けることにつながるため、無駄に疲弊してしまい、いざという時に筋肉が疲れて動けなくなります。そのため私は低く構えることは求めません。そもそもディフェンスは後ろに下がりながら動くことを基本とします。後ろに下がる場合、体を少し起こし、上半身を空して動くのが通常の動作です。間違いなく動きにくいはずです。そこで私は筋肉視点ではない次のような理論を用いて考えています。

 

 中学校の理科で習う分野ですが、高い位置にある物体は位置エネルギーを持っており、運動エネルギーへと移り変えることができます。

 人間の重心は骨盤の中にあると言われ、地面から55~56%の位置にあります。それはつまり立っているだけで位置エネルギーを持っており、運動エネルギーに変えることができるということでもあります。これを上手く使うといいです。例えば脚を肩幅くらいに軽く広げ、膝は軽く曲げるくらいにして立ちます。片脚を使え棒を取るかのように外すとすぐに倒れます。これを動きのきっかけとして使うと、そこまで筋力を必要とせずに、しかも素早く動くことができます。このような動きを私は「脱力動作」と呼び、筋力に頼った動きを「筋力動作」と呼んでいます。

 

 また脱力動作は筋力動作とは異なり、初動が相手にわかりにくいです。筋力動作は床を蹴った反動を利用して動くため、予備動作が起こります。しかし脱力動作では予備動作が起こることなく、いきなり素早く動き始めるため、バスケではほとんどありえない1対1の状況でチャージングをもらうことができるようになります。

 一見、手抜きのようなスタンスですが、かなり良いディフェンスになります。そのため、私の考えるディフェンスのスタンスは膝を曲げて低く構えるのではなく、柔道の軽く膝を曲げた「自然体」で構えるスタンスがいいと思っています。もしよろしかったらお試しください。